「あたらしい朝」「光る風」

あたらしい朝(1) (アフタヌーンKC)

あたらしい朝(1) (アフタヌーンKC)

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マンガを2冊連続して買った。
雨が降る深夜、僕を近所の本屋まで走らせた珠玉の作品…


「あたらしい朝」(黒田硫黄著)


久々の黒田硫黄の新作。この作品が出るぞ出るぞと、mixi黒田硫黄コミュニティを眺めながら心待ちしていた。
僕は黒田硫黄の絵が好きだ。日本の夏を描かせたら、彼を上回る人はまだ見たことがない(中山ランキングでは、五十嵐大介が2番目に上手い)。蝉の音や、蚊取り線香の匂いや、夏休み特有の空気感を僕は感じる。


絵の素晴らしさも相変わらずだが、今回は特に物語が素晴らしい。一巻の最後に一気に盛上がる。
主人公は思う。

昨日の夜はここで
星が輝いていた


アイロンのかかった制服で
未来の計画を立てていた


帰る船も
二人をつなぐ手紙も
昨日は持っていたものが


今日はひとつもない


昨日にもどればいいのに


あたらしい朝なんてこなけりゃいい


ここまで感傷的な黒田硫黄を始めて眺めた。
まだ簡潔はしていないが、これまでの黒田硫黄作品で最高傑作です。




「光る風」(山上たつひこ著)


今となっては内戦の真っ只中のグルジア、のゲストハウス(てか民宿)で知り合った日本人に教えてもらった漫画。その時の話題に永井豪の「ススムちゃん大ショック」とか並列で「光る風」が登場した。時を越え、3年後の復刊の折に購入してみた。


これが少年漫画誌によく掲載されたなと思うほど、奇妙で線の太い傑作。70年代とは一体どんな時代だったのだと思わざるを得ない。wikipediaによると「はだしのゲン」は少年ジャンプ(!)に連載開始されたのが1972年。


意味の深い台詞を主人公は印象的に吐く。


いまのぼくが
むかしの若者に
たいして いだく
あわれみにも
にた感傷を…


やはり
何十年かののちに
生きる若者が
いまのぼくたちに
たいしても
いだくの
だろうか?


国家という名のもとに、何もできずに踊らされている若者の話。
あるいは僕も、君達も。