暗い過去シリーズ「傷」編

大学1年の時の情報処理の授業で作ったコンテンツを移植します。
若き頃の面影を。
以下に記す。

自分の右手にふと目をやる。縦に5cmほどの一筋の傷がある(ミギーは無関係)。それは、今でも忘れはしない。

その時僕は小学5年生だった。その当時の苦手科目であった図工の作品をまだ仕上げておらず、面倒くさいと思いながら家に持って帰った。

ここで、その課題を述べよう。厚さ約3cm、長さ約15cmほどの木製のスプーンとフォークのお化けみたいなのに、彫刻刀で細工をするというものである。肝心なデザインは、自分の名前をローマ字で深く、大きく彫りつけるというものである。小学5年生にしては斬新なローマ字を使い、しかも自分の名前を表札のごとく彫り付けるという、当時から天才児を匂わせる大作に挑んだわけである。しかも毎度のごとく、デザインにほとんどの時間を費やす気合の入りようである。

そして夕飯前に古新聞を広げてサクサクと彫り付けていく。しかし、自分の実力と反比例して彫刻刀の切れ味が悪い。木の質もなかなか悪い。とりあえず彫刻刀を磨ぎまくる。しかし、努力むなしく一向に切れ味が悪いままである。だんだんイライラが溜まってくる。
そこで、色々試してみる(半ヤケクソ)。何事も実験である。とりあえず僕は左利きでそれが原因と思われたため、右手に持ち替えてやってみる。全然変わらん。むしろ彫りにくいだけである(当たり前)。
その次に、自分の彫り方が悪いと思われたため手を返してやってみる。つまり、自分の体から離れるようにして彫るのではなく、自分の体の方に向かって彫るのである。あれ?結構いけるぞ!力はそれなりにいるけど。
そこで、この方法で着々と仕事をこなしていく。
力を込めたその瞬間


木の淵が飛び、木を押さえていた右手の親指の付け根を軽やかに彫刻。不思議と痛みは皆無。何故か血は出ず、白いものが見える。落ち着きつつ親を呼びつける(微妙にテンパイ)。そしてタクシーに乗り病院へ。
ほとんど待たされずに緊急のところで縫ってもらいにいく。しかし、何故か専門のお医者さんはいなく、凄く若い白衣着た男の人に縫ってもらうことになる。

嫌いなもの:注射

チクチク細かくその部位を刺されまくる。そして待ちに待った縫いが始まる。とりあえず、今回はざっと縫うと言われる(何かおかしい)。自分の手に糸が入っていく。


「糸、どうやって結ぶんでしたっけ?」

ありえない・・・。ものの見事に実験台になっちゃいました。
縫い終わり、明日また縫いに来てくださいといわれる。もーうんざり。何が嫌かって、縫う前の儀式が嫌なんだよ。

結局、次の日はまともな先生に運良くあたり10針ほど縫い、今も傷跡としてリアルに残っているのである。