ゆれる


是枝氏の弟子らしい西川美和監督作品。
全く期待していなかったのだが、個人的には大変素晴らしい映画だった。
新宿武蔵野館


4人で観に行ったのだが、僕を除いた3人が悪い映画だったと感想を述べていた。個人的には映画万歳と叫びたくなるような良さだったのに…やはり映画とか、数字で計れないものは観る人によって作品の感じ方が違うから面白い。


評が割れる原因の一つに、視聴者のバックグラウンドが影響すると思う。丁度この映画の題材が「兄弟」だったため、男兄弟を持つ僕には共感に値するものがあったし、少なからず自分と当てはめて観ていたと思う。だからストーリーに純粋にのめりこめた。逆に兄弟がいなかったら、3人と同様に大したことの無い映画だったと言っていた可能性が高い。


それを抜きにしても、日本映画特有の静かなムードや、必要以上のセリフのなさや、頭を適度に使わせてくれるわかり易い隠喩の多用や、ゆれるカメラがツボだった。ストーリー云々を抜きにしても、監督の苦労がにじみ出ていたし、いい映画だったぞ!

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映画が何故好きなのか考えてみた。
僕の日常とは違って、映画の世界はとても感情的だから好きだ。映画では怒るときには椅子を投げつけるし、人はすぐに死ぬし、悲しいときには涙を流す。感情を素直に発露する。とても人間的な人々がそこで暮らす。僕の取巻く世界はのっぺりと、案外感情の起伏が激しそうで薄くて、映画的な感情表現なんて年単位でご無沙汰だ。そんな渇きを潤してくれる気がするから、映画が好きなんではないかと思った。