桜桃の味

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イラン人、アッバス・キアロスタミ監督。
カンヌパルムドール受賞作品。

イランに行ったが、イラン映画が一時期流行ったということも知らない無知ぶりを発揮した。恥ずかしくも、今更見ることにした。

自殺願望のある人が、自分を埋めてくれる人を探すというのがこの物語の筋である。
車を走らせ、延々と人を探す。god speed you black emperor並の退屈なスタートだ。これははずれだと思ったが、素晴らしいフィナーレを飾り、実に良い映画だった。

一般論をコピペのように言う人の言葉は心を動かさない。例え素朴であっても、その人の心から出る言葉こそが人を動かす。
老人は日常の素晴らしさを語る。
じわじわと胸に響く。

彼もまた、何かを悟った映画監督の一人だと感じた。

僕は黒田硫黄という漫画家が好きだ。彼の描く漫画のストーリーは大して面白いとも思わない。
では何故好きなのか?
その画面には、僕の好む素晴らしき日常が美しく描かれているからである。触れると胸がキュンとなる。

緑の光線」の夕日には何も感じなかったが、この映画の夕日はたまらなく美しい。

ちなみに「桜桃」とはサクランボのことらしい。