潮騒

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三島由紀夫作。
本を好きになる前、大学2年の頃、後輩が面白いと言っていたのが記憶の片隅にあり、2年遅れで読んでみることにする。
あらすじを簡単に説明する。
場所は超田舎の全く都会ズレしていない島。そこに住む純朴な青年男児が、他所からきた女児に一目惚れする。しかし彼らの恋路には行く手もの壁が。。

三島由紀夫の小説に求めるもの。彼の小説は「金閣寺」しか読んでいなかったのだが、その作中にあった根暗なドロドロさと、特殊な視点と深い洞察が僕に衝撃を与えた。それこそを期待していた。

潮騒」には正直肩透かしにあった気分だ。読み込みが足りないせいか、僕の目にはただの「純愛小説」にしか映らなかった。
ストーリーもありふれている。ラストに山火事を起こすような大どんでん返しを期待したが、案の定裏切られた。
人間の汚いドロドロとした心理など存在しなかったし、深さを感じることができなかった。

好きな本で「潮騒」を挙げる人が多い。何故なのだろうか。恐らく読みやすさと三島作品というところから来ているのだと思う。
金閣寺」は300ページ超、「潮騒」は150ページ。文体も易しく、哲学書のようなわけわからんロジックも存在しない。「金閣寺」を読むのに同じところを読み返し読み返しして、2週間以上かかった。「潮騒」は一日とかからなかった。
「三島好き=インテリ」みたいなブランド力が存在すると勝手に思っている。やっぱ三島好きって言えばカッコいいじゃん。僕もそう言いたくて読んでいるような節があるしね。

こんな否定的な意見ばかりだが、駄作ではない。普通の作品。期待の幅が大きかったら、こう映ったのかもしれない。aphex twinアンビエント1が全然アンビエントっぽくなくてがっかりしたのと同じ。何の期待もなく聞けば良いのに。
やはり彼には脳を刺激するものを期待してしまう。