13

13 (角川文庫)

13 (角川文庫)

古川日出男著。
古本屋でハードカバーを800円にて購入。只今文庫本が発売されていることが発覚し、若干へこむ。
短い読書歴ではあるが、マイベスト3の一冊にこの本を本日付で加えた。


300〜400頁程度の分量ではあるが、やたら体力を必要とした。この本と過ごした3週間。読み終えると、人と別々の道を歩む時のような寂しさがあった。


・あらすじ
色覚異常の天才が中学卒業後、色を探しにザイールへ渡る。」
楽しい本なので、導入部だけ。


・良かった点
①日常の禁断の蜜
色覚異常とか、天才とか、その辺りの怪しい領域を扱っているところが、まずそそられる。左右で見える世界が違う人間。一歩間違えれば差別の匂いがするのだが、先天的特殊能力を持つ超人として存在する。


異世界
文明との接点のないアフリカの部族が出てくる。僕らの知識の範囲にある「人間の生活」を、遥かに超越した価値観や生活観を見せ付けられる。「霊力」=「力」として扱われる世界は衝撃的。SFではなく、リアルな世界として描かれる。
その他にも「神」「臨死体験」と言ったオカルト的用語が乱発する。ガチな現実世界として描かれる。


③ロジックの通った無茶苦茶な展開
ザイールの地にマリアが誕生する。その瞬間だけを切り取ってみると、確かにマリアの誕生としか言い様がない。しかしマリアの歴史を遡るによって、想像の範囲を超えたでっちあげの構図を目にすることができる。ザイールのマリアは人なり。裏側の全てを覗けるところが素晴らしい。



「日常の延長線」的な内容の話を好んでいたのだが、この本と比較するとスケール感の違いに気付く。知らない世界をリアルに伝わらせることができるこの本は素晴らしい。